2025年2月、日鉄興和不動産は、東京都目黒区に環境配慮型木造賃貸マンション「リビオメゾン大岡山」を竣工。その中の1室を、サステナブルを体験できる無料宿泊施設『BOOK HOTEL 物々語』として6月1日にオープンした。

FRaU SDGs会員へのヒアリングによって、ユーザーインサイトを抽出
無料でサステナブルを体験できる宿泊施設 ── 。そのアイデアの誕生には、SDGsのリーディングメディア「FRaU」の<FRaU SDGs会員>(読者コミュニティ)を対象としたワークショップが大きく関係している。本企画の担当者、日鉄興和不動産の山本瑞生さんは、「SDGsへの取り組みは、何をするかが大切。そのヒントを得たいと思い、ワークショップを開催した」と、コラボレーションの狙いを語る。
「FRaU SDGs会員の方たちは、サステナブルへの感度が高く、生活の中でもSDGsを実践、意識している層です。SDGsの認知度は年々高まっていますが、それを実践となると、ハードルは急に高くなります。では、実践までできている方は、何が違うのか。どのような理由でアクションしているのか。インサイトを紐解くところから、企画はスタートしました」(山本さん)
ワークショップは、グループインタビュー形式で行われ、参加者に「SDGsアクションを実践した理由、継続できた理由」をヒアリング。そのなかで、サステナブルはいまや「高尚なもの」になっていること、そして「自分にもメリットがあるサステナブル」が求められていることが見えてきた。
そこに昨今注目の「リユース」というキーワードをプラス。中古品の利用も立派なサステナブルであり、人から人へ渡るのは、モノだけでなく、物語も含まれる。こうして複数のキーワードが絡み合い、サステナブルを体験できる無料宿泊施設『BOOK HOTEL 物々語』というアイデアへと昇華された。
生まれたのは、“語りたくなるサステナブル”を体験できるホテル
「本ホテルは、中古品とそこに宿る物語に浸ることで、"語りたくなるサステナブル"を体験できる無料宿泊施設です。室内の備品は、さまざまな場所で使われていた中古品で構成されています。室内の10の備品は、10名の作家から『大切だったけれど手放す時が来たもの』をテーマに、<思い出のモノ>と<物語>をセットで寄贈いただきました。それぞれの物語を伝えるのは、室内に置かれた小冊子(ZINE)。宿泊した方はそこに、同じテーマで自分の物語をしたためるのがルール(宿泊料)となっています」(山本さん)

物語の詰まったモノとストーリーに触れることで、「物を大切に扱う」こと、「時が来たら誰かへ手渡す」ことの豊かさ、それらもサステナブルな行動のひとつであるという気づきを届けることを、このホテルでは目的としている。

「ホテルの名前には、SDGsもサステナブルもあえて入れていません。これもワークショップから得たヒント、『サステナブルと聞くと高尚に感じる』を意識してのことです。面白そうだなと体験してみたらサステナブルにつながっていた。そんなイメージで作成しています」(山本さん)
SNSを中心に話題となり、すぐに満室に
宿泊者は、新たな物語を紡ぐのがルール。体験を通して、リユースの大切さ、魅力に気づくことがゴール。その斬新な内容に、本企画はSNS上で大きな話題となった。
「SDGsへの取り組みは、大前提として、CSR(企業の社会的責任)の観点から重要なものです。その中で、生活者の行動変容を促すような取り組みをすることで、弊社の企業姿勢を示すことができたらと思いました。いざ告知を始めると、SNS上で若年層を中心に話題となり、あっという間に予約が埋まってしまいました。応募してくださる方の多くは、サステナブルへの関心も高く、前面にSDGsを押し出さなくても、関心のある方は見つけてくれるのだという発見がありました」(山本さん)
企業がSDGsに取り組むことは当たり前になった。だからこそ、「何をするか」が問われるいま、押し付けるのではなく、生活者に寄り添うことで、共感と支持を獲得できる。本企画はインサイトを抽出し、具現化した、好事例と言えるだろう。
『BOOK HOTEL 物々語』
https://livio-sumai.jp/lab/case/ookayama/