
2025年5月31日〜6月1日に信州大学松本キャンパスで開催された、日本マーケティング・サイエンス学会第117回研究大会で「エンドーサーとしてのタレント、キャラクター、YouTuber、VTuberの可能性比較」を報告してきました。
内容については、当日いただいたアドバイスを反映させた上で当連載でも一部を紹介する予定です。
梅雨入り前の松本は、松本城や開智学校などの国宝が見事でした。インバウンド向けか、松本城には忍者もいました(笑)

前回は、アニメやキャラクターによる聖地巡礼に関する行動について、以下の内容をご紹介しました。
- 「マンガ・キャラクター関連の施設やミュージアム」への訪問経験者は2割弱
- 「マンガ・キャラクター関連の期間限定展示会」への訪問経験者も2割弱
- 聖地巡礼は男女3-74歳の1割強が経験、男20-34歳では3割弱
- 聖地巡礼経験者はこの11年間で倍増、女20-34歳が特に増加
- 広義での聖地巡礼は男女3-74歳の3割弱が経験、男20-34歳では約4割
今回は、同じく2024-25年キャラクター定量調査から、現在の「推し活」を構成する行動である、推し声優・俳優の有無、アニメ・マンガ・キャラクターの関連イベント、2.5次元舞台、コラボカフェ訪問、アニソンカラオケなどの経験に関する結果を紹介します。
この調査は筆者が企画・分析を行い、実査部分を「楽天インサイト」に委託して2024年12月6日(金)~10日(火)に実施しました。調査に関するお問い合わせは、SNSへのDMなどで直接筆者までお願いいたします。
推し活の対象となる声優や特撮俳優がいる人は2割弱
図表1は、「大好きで応援しているアニメ声優や特撮俳優がいる」の質問に対する回答です。男女3-74歳全体で「かなり当てはまる」+「まあ当てはまる」と答えた人は16.2%でした。性・年齢別にみると、男子ティーンと男20-34歳で3割弱、女子ティーンと女20-34歳、男35-49歳で2割以上います。
図表1. 大好きで応援しているアニメ声優や特撮俳優がいる

マンガ・キャラクター関連イベント参加経験者は2割弱
図表2は、「アニメやマンガ、特撮、キャラクターの関連イベント(ミュージカルや声優のショー、アニメソングのライブなど)に行ったことがある」の質問に対する回答です。男女3-74歳全体で「かなり当てはまる」+「まあ当てはまる」と答えた人は14.3%でした。性・年齢別にみると、男女20-34歳と女子ティーンで2割以上、男35-49歳も2割近くいます。先ほどの推し活対象声優と比べて、男子ティーンが少ない点が目につきます。
図表2. アニメやマンガ、特撮、キャラクターの関連イベント(ミュージカルや声優のショー、アニメソングのライブなど)に行ったことがある

2.5次元舞台・ミュージカル鑑賞経験者は約1割、男女ヤングが多め
図表3は、「俳優・声優がキャラクターを演じる2.5次元舞台・ミュージカルに行ったことがある」の質問に対する回答で、男女3-74歳全体で「かなり当てはまる」+「まあ当てはまる」と答えた人は10.2%でした。
図表3. 俳優・声優がキャラクターを演じる2.5次元舞台・ミュージカルに行ったことがある

性・年齢別にみると、男女20-34歳で約2割、他は男35-49歳と男女ティーンで約1割と、チケット代がかかることもあってかティーンの鑑賞者が少なく、限られた層の活動であることがわかります。
キャラクターコラボカフェ訪問経験者は約2割、女子ティーン・ヤングが多い
図表4は、「キャラクターとコラボしたカフェや飲食店に行ったことがある」の質問に対する回答で、男女3-74歳全体で「かなり当てはまる」+「まあ当てはまる」と答えた人は20.6%でした。性・年齢別にみると、女性はティーンから34歳で3割以上と多く、男性ティーンから49歳も2割以上います。キャラクターのコラボカフェ・飲食店訪問経験者は、特に女性が多いのが特徴で、男女キッズも2割近くいるなど、幅広い層に浸透しています。
図表4. キャラクターとコラボしたカフェや飲食店に行ったことがある

カラオケでアニメ・特撮の歌をよく歌う人は約2割、ティーン女子で突出
図表5は、「カラオケでアニメや特撮の歌をよく歌う」の質問に対する回答で、男女3-74歳全体で「かなり当てはまる」+「まあ当てはまる」と答えた人は18.6%でした。性・年齢別にみると、女性ティーンが4割近くと突出して多くなっています。また、男女20-34歳が3割弱、男子ティーンと男35-49歳も約2割います。以上の結果から、コラボカフェほどではありませんが、アニソンカラオケも比較的幅広い層に浸透していることがわかります。
図表5. カラオケでアニメや特撮の歌をよく歌う

声優推しは11年間で1.4倍に。男女ティーンと男ヤングが特に多い
冒頭の「大好きで応援しているアニメ声優や特撮俳優がいる」に対する回答を、時系列で比較したのが図表6です。男女3-74歳全体では、2013年2月の11.9%から横這いだったのが、2021年11月には14.4%、2024年2月には16.7%と、この11年間で1.4倍になっています。最新の2024年12月には16.2%と足踏み状態となっており、ジェフリー・ムーア氏が提唱した「キャズムの谷」(イノベーターとアーリーアダプターで構成される初期市場)に居続けるのか、アーリーマジョリティ以降の層へと広がっていくのか、気になるところです。
図表6. 性・年齢別 時系列比較:大好きで応援しているアニメ声優や特撮俳優がいる

性・年齢別では、2024年2月に男女ティーンで3割を超え、男20-34歳も凸凹が目立ちますが、ここ数年は増加傾向にあります。
今回は以上です。今後はあらためてマンガIPのマーケティングへの導入を後押しする連載を開始する予定です。どうぞお楽しみに。
第35回:《2024-25年調査》 マンガ・アニメを目的とする「聖地巡礼」に積極的なのは?
第34回:《2024-25年調査》 タレント、YouTuber、VTuberの最新人気ランキング
第33回:《2024-25年調査》 マンガ・テレビアニメ・劇場アニメ・ネット動画に関するユーザーの意識はどう変わったか
第32回:《2024-25年調査》 キャラクターの最新人気ランキング
第31回:スマホの普及で生活者とキャラクターとの接点はどう変化したか
第30回:タレント・キャラクター・YouTuber・Vtuberの「Z世代向けエンドーサー(宣伝マン)」としての可能性を分析する(4)
第29回:タレント・キャラクター・YouTuber・Vtuberの「Z世代向けエンドーサー(宣伝マン)」としての可能性を分析する(3)
第28回:タレント・キャラクター・YouTuber・Vtuberの「Z世代向けエンドーサー(宣伝マン)」としての可能性を分析する(2)
第27回:タレント・キャラクター・YouTuber・Vtuberの「Z世代向けエンドーサー(宣伝マン)」としての可能性を分析する
第26回:《2024年調査》キャラクター・YouTuber・Vtuberのエンドーサー(宣伝マン)としての可能性を分析する
第25回:《2024年調査》 YouTuber・VTuberファンの、マンガ・アニメ・キャラクターへの反応を分析する
第24回:《2024年調査》 タレントタイプ別ファンの、マンガ・アニメ・キャラクターへの反応を分析する
第23回:《2024年調査》 各キャラクターの支持層から、どのような反応が期待できるかを分析する
第22回:《2024年調査》 キャラクターの最新人気ランキングとその支持層
第21回:コロナ禍の前後で、キャラクター関連への「好意度」はどう変化したか
第20回:コロナ禍の前後で、キャラクター関連への接触はどう変化したか
第19回:地域によって異なる? キャラクターやマンガへの好意度と関連行動(3)
第18回:地域によって異なる? キャラクターやマンガへの好意度と関連行動(2)
第17回:地域によって異なる? キャラクターやマンガへの好意度と関連行動(1)
第16回:調査で解明する、エンドーサー(宣伝マン)としてのキャラクターの可能性(3)
第15回:調査で解明する、エンドーサー(宣伝マン)としてのキャラクターの可能性(2)
第14回:調査で解明する、エンドーサー(宣伝マン)としてのキャラクターの可能性(1)
第13回:純粋想起による2023年の好意度ランキング(ご当地キャラ&タレント・有名人&Vtuber編)
第12回:純粋想起による2023年の好意度ランキング(キャラクター全般&企業キャラ編)
第11回:さまざまなタイプのキャラクターファンが、どのようなプロフィールを持つのか分析する(3)
第10回:さまざまなタイプのキャラクターファンが、どのようなプロフィールを持つのか分析する(2)
第9回:さまざまなタイプのキャラクターファンが、どのようなプロフィールを持つのか分析する(1)
第8回:2023年トレンド予測・キャラクター活用は5つの流れで進む
第7回:拡がるVtuberの活動領域とその実像を分析する(前編)
第6回:拡がるVtuberの活動領域とその実像を分析する(前編)
第5回:Z世代のマンガ原作コンテンツへの支持傾向と消費行動(後編)
第4回:Z世代のマンガ原作コンテンツへの支持傾向と消費行動(中編)
第3回:Z世代のマンガ原作コンテンツへの支持傾向と消費行動(前編)
第2回:ティーン・ヤング層に人気のマンガは、ターゲットにどんな体験を提供するか
第1回:男子ティーン・ヤング中心に人気のマンガコンテンツ。女子ティーンからコアな支持を集める作品も
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