
2025年7月2日、東京ビッグサイトの「ライセンシングジャパン」会場で開催された「日本キャラクター大賞2025」の表彰式に、選定委員&プレゼンターとして参加しました。
日本キャラクター大賞 キャラクター・ライセンス賞は「サンリオキャラクターズ」「ちいかわ」「MINECRAFT」、日本キャラクター大賞 ニューフェイス賞は「Esther Bunny(エスターバニー)」、プロダクト・ライセンシー賞は「ミズノヘルシーインテリア 「PEANUTS」デザインシリーズ」、プロモーション・ライセンシー賞は「マクドナルド×エヴァンゲリオン」、リテイル賞は「DAISO(ダイソー)」が受賞、選定委員特別賞には、「パンどろぼう」が選ばれました。
そして、グランプリを獲得したのは、2022年、2024年に続いて三度目の栄冠となる「ちいかわ」でした。日本キャラクター大賞サイトにも詳細記事が記載されています。SNS、ゲーム、韓国系など、キャラクター業界も年々多様化が進んでいることを実感した顔触れでした。関係者の皆さま、おめでとうございました!

さて、前回は現在の「推し活」を構成する行動である、推し声優・俳優の有無、マンガ・アニメ・キャラクターの関連イベント、2.5次元舞台、コラボカフェ訪問、アニソンカラオケなどの経験について、以下の内容を紹介しました。
- 推し活の対象となる声優や特撮俳優がいる人は2割弱
- マンガ・キャラクター関連イベント参加経験者は2割弱
- 2.5次元舞台・ミュージカル鑑賞経験者は約1割、男女ヤングが多め
- キャラクターコラボカフェ訪問経験者は約2割、女子ティーン・ヤングが多い
- カラオケでアニメ・特撮の歌をよく歌う人は約2割、ティーン女子で突出
- 声優推しは11年間で1.4倍に。男女ティーンと男ヤングが特に多い
今回は番外編として、2025年6月14日から17日に、香港経由で中国の深圳および周辺地域を訪問して、マンガ・アニメのキャラクターおよびガチャガチャ市場を視察してきた体験を紹介します。
なおこの訪問は、ガチャガチャ業界の中堅メーカーである株式会社ケンエレファントから独立し、2025年3月にブルーマウンテン株式会社を起業した青山雄二さんからのお誘いで実現しました。
同行したのは、青山さんを紹介してくれた社会人大学院時代の仲間でフランチャイズ本部機能コンサルをしている持地剛さんと、タカラトミーアーツから独立して日本ガチャガチャ協会を立ち上げた、船橋のご近所仲間でもある小野尾勝彦さんです。
現地では、青山さんと、深圳を本拠地として中国全土で急成長中の深圳市鶴本科技有限会社(HopeBest Technology CO.,Limited:以下HBTと略称)の陳碧野(Ally)社長および社員の方たちに各地をご案内いただき、快適な旅を続けることができました。この場を借りて、心から感謝申し上げます。

深圳や広州ではマンガ・アニメ好きの若者がガチャガチャに夢中
香港国際空港から地下鉄を乗り継いで1時間、クルマに乗り換えて最初に訪問した深圳ビットシティでは、日本のマンガ・アニメファンによる壁への書き込みや、中国やショッピングモールのオリジナルキャラクターを各所で見かけました。
土曜の午後だったこともあり、多くの学生や若者たちが楽しみながら、高額フィギュアやぬいぐるみ、トレーディングカード、缶バッジ、アクリルキーホルダー、ラバーストラップなどが飾られた店舗が密集するモール内を闊歩し、一部は推しキャラのコスプレを披露していました。

中国のガチャガチャは全てキャッシュレス販売
NEW NEW TOWN深圳店は、店舗面積312m2、ガチャ機械1,812台の大規模店です。各店舗とも黒基調で、黄色や金色がアクセントの高級感ある内装が共通しています。
日本各メーカーのガチャガチャが日本語表記のまま販売されていることもあって、一見日本と変わらない光景ですが、機械全てがキャッシュレスである点が大きく異なります。1回20元(400円)~25元(500円)が多く、中には50元(1000円)のガチャもありました(1元20円で計算)。
硬貨を扱う制約がなく、自由に価格設定出来る点は、ビジネス上の大きなメリットです。自分も到着早々、WeChat Payが使えるよう登録しました。余談ですが、バイクと一体化した屋台の飲食店も全てキャッシュレス、WeChat Payでの支払いオンリーでした。

広東省で生産されている「Labubu」などのオリジナルIPが大人気
深圳や香港国際空港では、日本の直営店でも「Labubu(ラブブ)」などのオリジナルキャラクター(IP)が人気のPOP MARTを見かけました。
香港出身アーティストがデザインし、広東省で生産されている「The Monsters」シリーズの一員であるこのキャラクターは、日本でも昔からお馴染みのブラインドボックスで販売されています。多くの無人店舗でも販売されていました。人気アーティストのSNS投稿で人気に火がついて世界的ヒットとなり、プレミア価格も付いているそうです。

中国のガチャガチャビジネスは日本以上に急成長する可能性あり
他にも広東省界隈のショッピングモールを複数視察しました。広州時尚天河商業広場では、中国でも有数の広さの地下空間に、飲食店やファッション店に交じって、TOPTOYなどオリジナルキャラクター(IP)も作っているフィギュア店や、NEW NEW TOWNなどのガチャガチャ店を多数見かけました。
オシャレな店とオタクな店が同じ空間に並んでいる様子が日本では珍しい光景で、なんとも言えない熱気と迫力でした。

東莞の东莞汇一城も、一見すると近未来のスタイリッシュな佇まいながら、KKグループが展開するライフスタイル雑貨店KKVにはオシャレ雑貨と初音ミク(現地表記は初音未来)などのグッズが黄色で統一された空間に併存。向かいにはNEW NEW TOWNなどのガチャガチャ店やフィギュアショップが並んでいました。

立地や商圏による違いはありましたが、広大なモール内が多くの若者であふれ、東京キャラクターストリートや中野ブロードウェイ、池袋サンシャイン界隈、秋葉原を上回る熱気でした。
日本のマンガ、アニメ、ファンシー系キャラクターへの根強い人気を再確認するとともに、中国オリジナルのキャラクターやショップも着実に支持を集めつつある様子を、肌で実感しました。
日本ガチャガチャ協会会長の小野尾さんからの情報では、現在第四次ブームとして2023年度の約1,100億円から2024年度には約1,400億円へと驚異の成長を続け、メーカー数約50社以上、筐体(ガチャガチャ機)80万台強、設置店舗約8万店舗に達するなど、日本のガチャガチャ市場は絶好調です。
日本にいると、中国経済の不調を示すニュースばかり聞こえてきますが、経済特区としてこの45年で驚異的な発展を遂げた深圳や周辺地域を直接見てきた印象は、全く異なるものでした。
中国でのガチャガチャやフィギュア界隈ビジネスはまだ黎明期ですが、主に日本発のオタク文化を本気で愛する現地の若者の多さと熱気、開発スピードの速さをみる限り、人口が圧倒的に多い中国都市部における発展の可能性は、大いにありそうです。
モノづくり現場のイノベーションが進み、手作業の職人技も健在
今回の視察では、HBTが日本メーカーの依頼でOEM生産している高額フィギュアの金型製作工場、フィギュア塗装・組み立て工場も見学してきました。
金型製作では日本の大手プラモデルメーカーを上回る高品質の技術が導入されていたり、一方では昔ながらの職人的手作業に頼らざるをえない繊細な塗装・組み立て工程もあったりと、モノづくりの奥深さを垣間見ました。

視察にあたってお世話になりました青山さん、Allyさん、社員の皆さん、本当にありがとうございました。共同研究か何かでまたご一緒できる機会がありましたら、深圳でも東京でもお会いすることを楽しみにしております。
さて、2020年から6年にわたってお届けしましたこの連載は、今回でいったん終了とさせていただきます。
長い間ご覧いただきまして、ありがとうございました。
次回からは、Cステーションの姉妹サイト「マンガIPサーチ」に場を移して新しい連載をスタートします。タイトルは「社内を動かす! “マンガ活用”のプレゼン資料になるデータと理論」です。
マーケティングご担当の皆さんが、マンガIPを採用し、そして活用するための一助となるよう、内容の濃い連載にしたいと考えています。どうぞお楽しみに!
第36回:《2024-25年調査》 マンガ・アニメに起因する推し活行動の実態
第35回:《2024-25年調査》 マンガ・アニメを目的とする「聖地巡礼」に積極的なのは?
第34回:《2024-25年調査》 タレント、YouTuber、VTuberの最新人気ランキング
第33回:《2024-25年調査》 マンガ・テレビアニメ・劇場アニメ・ネット動画に関するユーザーの意識はどう変わったか
第32回:《2024-25年調査》 キャラクターの最新人気ランキング
第31回:スマホの普及で生活者とキャラクターとの接点はどう変化したか
第30回:タレント・キャラクター・YouTuber・Vtuberの「Z世代向けエンドーサー(宣伝マン)」としての可能性を分析する(4)
第29回:タレント・キャラクター・YouTuber・Vtuberの「Z世代向けエンドーサー(宣伝マン)」としての可能性を分析する(3)
第28回:タレント・キャラクター・YouTuber・Vtuberの「Z世代向けエンドーサー(宣伝マン)」としての可能性を分析する(2)
第27回:タレント・キャラクター・YouTuber・Vtuberの「Z世代向けエンドーサー(宣伝マン)」としての可能性を分析する
第26回:《2024年調査》キャラクター・YouTuber・Vtuberのエンドーサー(宣伝マン)としての可能性を分析する
第25回:《2024年調査》 YouTuber・VTuberファンの、マンガ・アニメ・キャラクターへの反応を分析する
第24回:《2024年調査》 タレントタイプ別ファンの、マンガ・アニメ・キャラクターへの反応を分析する
第23回:《2024年調査》 各キャラクターの支持層から、どのような反応が期待できるかを分析する
第22回:《2024年調査》 キャラクターの最新人気ランキングとその支持層
第21回:コロナ禍の前後で、キャラクター関連への「好意度」はどう変化したか
第20回:コロナ禍の前後で、キャラクター関連への接触はどう変化したか
第19回:地域によって異なる? キャラクターやマンガへの好意度と関連行動(3)
第18回:地域によって異なる? キャラクターやマンガへの好意度と関連行動(2)
第17回:地域によって異なる? キャラクターやマンガへの好意度と関連行動(1)
第16回:調査で解明する、エンドーサー(宣伝マン)としてのキャラクターの可能性(3)
第15回:調査で解明する、エンドーサー(宣伝マン)としてのキャラクターの可能性(2)
第14回:調査で解明する、エンドーサー(宣伝マン)としてのキャラクターの可能性(1)
第13回:純粋想起による2023年の好意度ランキング(ご当地キャラ&タレント・有名人&Vtuber編)
第12回:純粋想起による2023年の好意度ランキング(キャラクター全般&企業キャラ編)
第11回:さまざまなタイプのキャラクターファンが、どのようなプロフィールを持つのか分析する(3)
第10回:さまざまなタイプのキャラクターファンが、どのようなプロフィールを持つのか分析する(2)
第9回:さまざまなタイプのキャラクターファンが、どのようなプロフィールを持つのか分析する(1)
第8回:2023年トレンド予測・キャラクター活用は5つの流れで進む
第7回:拡がるVtuberの活動領域とその実像を分析する(前編)
第6回:拡がるVtuberの活動領域とその実像を分析する(前編)
第5回:Z世代のマンガ原作コンテンツへの支持傾向と消費行動(後編)
第4回:Z世代のマンガ原作コンテンツへの支持傾向と消費行動(中編)
第3回:Z世代のマンガ原作コンテンツへの支持傾向と消費行動(前編)
第2回:ティーン・ヤング層に人気のマンガは、ターゲットにどんな体験を提供するか
第1回:男子ティーン・ヤング中心に人気のマンガコンテンツ。女子ティーンからコアな支持を集める作品も
<第1部 バックナンバー>
第1部 連載記事一覧